中国の2018年GDPにおいて、金融業が占める割合は8%です。
(経済誌「21世紀経済報道」記事より)
日本は同じ比率が5.2%なので、日本より比率が高いです。
(2012年内閣府のレポート)
中国では徐々に金融業を開放する動きがあります。
おそらくですが、中国における金融業は競争激化するとともに、
そのマーケット規模も拡大をしていくものと考えます。
私は日本と中国の金融業に、小さい会社のいち社員としてですが、
関わっているのですが、金融業において重要になってきているのが、
AML(アンチマネーロンダリング)です。
このAMLに関して日本、中国、グローバルでどうなっているのか、
各種用語などを体系的に整理したことがなかったので、勉強のため記事にしました。
まずは色々な言葉、用語の整理をします。
AML
Anti Money Launderingの略で、アンチマネーロンダリングです。
反社会的勢力、つまりテロ組織や詐欺集団などが、資金洗浄できないようにしよう、
という活動のこと。
KYC
Know Your Clientの略で、本人確認のことです。
金融機関がサービスを提供する顧客について知ろうという活動のことです。
犯収法
犯罪による収益の移転防止に関する法律の略。
FATF
Financial Action Task Force on Money Launderingの略。
日本語では「マネーロンダリングに関する金融活動作業部会」。
日本、中国だけではなく世界中の国々が参加している。
私も持っている平安グループの証券口座の開設フローです。
STEP1
平安証券のAPPをダウンロード
平安証券の口座開設はアプリからが前提です。
Webサイトからは口座開設ができません。
STEP2
アプリから口座開設を選択
必要なのは
身分証明書
銀行カード
の2つです。
STEP3
携帯番号による認証
電話番号を入れて送信を押すとSMSが飛んできます。
STEP4
身分証明書のアップロード
身分証明書の表面、裏面をアップロードします。
STEP5
個人情報の入力
OCR機能がついているので、住所や名前などは自動入力されます。
STEP6
約款などに同意
取引概要や約款などに同意します。
STEP7
パスワードの設定
任意のパスワードを設定します。
STEP8
銀行を選択
入金、出金をする銀行を選択します。
STEP9
リスク許容度のアンケート
投資資金の出どころ、投資目的、投資経験などを聞かれます。
STEP10
アプリ経由でスタッフと動画で会話
アプリを使って平安証券のスタッフと動画電話を行います。
その際に身分証明書を用意しておき、身分証明書と自分の顔を同時に映すよう求められます。
更に再度投資経験をヒアリングされたり、次に何をするか、キャンペーンの紹介などがされました。
STEP11
SMSによる最終確認
SMSでメッセージが来るのでYESのYと返信すると、完了。
アプリから予め登録した銀行から入金すれば、株の購入ができます。
日本において銀行口座や証券口座を開設する際には、必ず
転送不要の書類郵送
というSTEPが入ります。
これは口座開設者が本当にそこに居住しているか、を確認するものです。
またこれは「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づいて、
金融機関に義務付けられています。
郵送により最終確認が行われるので、口座開設完了まではどうしても1営業日またはそれ以上の日数がかかってしまっています。
しかし中国では、このSTEPがまるごと抜けているので、平安証券のように即日口座開設完了、即株の売買ができます。
また、身分証明書に記載されている住所だけを正としており、実際に口座開設者がどこに居住しているか、までは見ていないようです。
今は違うかもしれませんが、私が2010年に浦東発展銀行で口座を開設した際、
パスポートのみで開設完了、その場で銀行カードを受け取ることができました。
どこに住んでいるかは申込み欄には記載しましたが、証明書の提出までは求められませんでした。
繰り返しですが、中国におけるKYCでは、現住所(実際に今住んでいる場所)を重要視していないと考えられます。
先に記載した通り「犯罪による収益の移転防止に関する法律」で金融機関に、
顧客の現住所を厳格に管理/確認するよう義務付けられています。
ただし、2018年10月に若干の緩和がされました。
これまでは転送不要の簡易書留で現住所を確認すべし、というのが原則でしたが、
一定の基準を満たした端末(スマホ)を使えば転送不要の簡易書留によらなくても良い
という緩和がされています。
一般的にはeKYCと呼ばれており、電子本人確認といったところでしょうか。
みんなのFX(トレイダーズ証券)ではeKYCによる即日口座開設を既にリリースしています。
以前の記事でも書きましたが、テンセントが運営するテンセントクラウドという
企業向けサービスでは様々なプロダクトを提供しています。
この記事の中にある金融機関向け:本人確認サービスでは、本人確認のフローをより簡略化しています。
アリババクラウドも同じようなプロダクトを持っています。
犯罪履歴がある人が口座開設を申し込みしてきた場合、それを断らなければならないときがあります。
日本ですと暴追センターと呼ばれるデータベースなどから検索して、
犯罪者であるか否かを検索することができます。
中国では最高裁判所のデータベースが使えると思います。
名前や身分証明番号(マイナンバーのようなもので、戸籍のある人は必ずこの番号を持っている)から、裁判履歴を見ることができます。
平安証券の口座開設フローで見た通り、中国においても口座開設時には身分証明書の提出が必須なので、口座開設申請者が裁判において何らかの判決をされていないか見ることができます。
正直、これにはまだ方法はありません。
欧米系で検索するサービスがあるのですが、網羅しきれていません。
中国には共産党員が1億人以上いるので、網羅できるはずがないのです。
また同姓同名も多数おり、それがPEPsなのかそうでないのかの判断もできません。
仮にPEPsの定義を全人代に出席するような人とした場合、約2,000人程度なので、
これであればまだ方法はあるかもしれません。
しかし現状、私も方法がまだ見つかっていません。
野村證券や損保ジャパンなど、日系金融企業も中国市場へ進出しています。
他にも色々な金融業において開放が始まっていきます。
その際に、日本式でKYCやクライアントデューデリジェンスをしてしまうと、
本来取れた顧客まで逃してしまう可能性がありますので、
ローカルで使われている、または提供されているツールやデータベースを使って
その地域に沿った業務フローを構築する必要があります。