広告会社で働いているので、地下鉄やバスに乗ったり、
街を歩いたりしていると、どんな広告が最近出ているのかチェックする癖が
ついていて、自然と目に入ってきます。
そんな中、最近上海のあらゆる所で見かける広告がP2P金融プラットフォームの
屋外広告なんです。
前にもこちらで「人人貸」というP2P金融サービス(ソーシャルレンディング)の体験記を書きました。
P2PとはPerson to Person、つまり個人と個人という意味です。
つまり個人間で金を貸したり、借りたりできるプラットフォームのことを
P2P金融サービス(ソーシャルレンディング)と言います。
実際にやってみた(※)のですが、3,000元を3ヶ月預けて本当に利子がついて
帰ってきました。
※基本的に中国で外国人は理財商品を購入できません。
なので嫁のお父さんの身分証を借りて行いました(笑)
「網貸之家」というサイトから発表されたデータによると、
中国にはP2P金融プラットフォームは2,417サイトもあり、
2015年(1月1日~10月13日)の総取引金額は1,151億元(2.3兆円!!)で、
2015年9月比で18%の伸長。
平均利率は12,63%/年。
記事では中国語で「月环比·(yue huan bi)」と書かれてありました。
これ意味が分からなかったので、
『18%伸びてるってことは前年同月比だろう』と思ったのですが、
辞書で調べたところ、「前月比」でした・・・。
前月比で18%の伸長ってすごいですよね、めっちゃ伸びてるやん。
最近、中国の株価が下がって、不動産価格の上がり方も鈍化、
更に中央政府による金融施策で銀行の定期預金利率も1年定期で1,75%、
5年定期でもたった3%しかありません。
そんな中で年利12%なんて言われたら、そらお金が集まってきますよね。
今日見かけた広告は地下鉄のホームで電車を待っている時に見える壁に
かかっているライトボックスの他、
地下鉄に乗ると座席上や乗車口付近にあるポスター広告でした。
今日だけで3社のP2P金融プラットフォームの広告を見ていて、
競ってユーザーを確保しようとしているように思います。
またWebサイトを見ていてもバナー広告がたくさん出てきます。
(恐らく百度で検索しているので、リターゲティングされている。)
更にニュースサイトを見ていても
「人気のP2P金融プラットフォームランキング」
「90年代産まれの学生こそP2P金融プラットフォームで資産を増やそう」
「P2P金融プラットフォーム、安定している会社ランキング」
といったタイトルが見られますが、これは仕込みPR記事で、
記者に金を払って書かせている可能性が大です。
上記で紹介した地下鉄広告を例に取ってみましょう。
今日見た広告はいくつかの駅で同じ広告クリエイティブを見たので、
セット購入しているものと思われます。
仮に1ヶ月の掲載期間で掲載しているとして、主要路線(1号線とか2号線)で
掲出しているとしたら、最低80万元/月(1,600万円)以上はすると思います。
プラットフォーム側がいくらの利ざやを抜いているのか知りませんが、
80万元をペイするのに、どれだけのユーザーから、どれけの取引(貸し借り)を
してもらわないといけないのでしょう。
果たしてペイするのは何年後なのでしょうか。。。。
中国の国内企業は、日本企業のように小さなトライ・アンド・エラーを繰り返し、
少しずつ改善し、ある程度の成功方程式を見つけたら、それを横展開・拡大させていく
といった手法をあまり取らない傾向にあると思います。
まとまった金を集めて、ドカーンと金を投下して、宣伝して、
誰もが知ってるような認知を先行して獲得し、利益は後から取る、
こんな傾向にあると思います。
例えば、僕が中国に来たばっかりの記事で、アパレルECサイトのVANCLを紹介しました。
当時、毎日と言っていいほどVANCLの広告を屋外、Web、平面媒体で見かけました。
しかし、今ではほそぼそ運営しているだけで、全く広告を見かけませんし、
業績は全くスケールしておらず、むしろシュリンクしています。
ドッカーンと認知を取ることには成功しましたが、後から利益がついてこなかったのでしょう。
先行投資でキャッシュだけが出ていき、回収ができていないのだと思います。
逆に業態は違えど(※)、アパレル領域での認知はあまりなかった天猫は
阿里巴巴集団なので豊富な資金をバックに、広告展開し続け、
ある程度アパレル領域ECでも認知の高さと継続的収益を出しています。
※VANCLは服を自社でデザイン/製造し販売しているのに対して
天猫はモール型なので販売プラットフォームを貸して賃貸料と販売手数料で
収益を出しているので業態が違う。
ある程度認知を取るまでに、最初の大きな投資を行う資金があるか、
競合も同じく大きな認知を取るために大金を突っ込んでくるので、
それをいつまで続けられるか、が問題です。
タイトルにはマラソン型なんて書きましたが、そんな生ぬるい表現じゃないですね。
「いつまで全力ダッシュできるか型競争」でした。
多分、今は2,417サイトもあるP2P金融プラットフォームも、
2年後、3年後には10社程度、ヘタするとメインプレイヤーは3,4社になっていると思います。